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東京高等裁判所 昭和36年(く)42号 決定

少年 M(昭一九・七・八三)

主文

本件抗告を棄却する。

理由

本件抗告の理由は別紙記載のとおりであつて、右は重大な事実の誤認及び処分の著しい不当を主張するものと認められる。

よつて右抗告理由について判断する。

一、(事実誤認)本件記録殊に少年の司法警察員に対する供述調書によると、少年等が乗用自動車を窃取した動機はこれを運転したいためであつたのではあるが、使用後返還する意思であつたのではなく、不法領得の意思があつたことを優に認めることができるから、犯意を否定するが如き所論は採用し得ない。

二、(処分の不当)家庭裁判所調査官作成の少年調査票その他本件記録によると、少年の経歴や、性格、環境等は原決定に詳細記載のとおりであつて、少年の要保護性はかなり著しいものと認められ、殊に父親との心情の不一致の点もさることながら交友関係も不良で、前処分たる保護観察並に試験観察も効果薄く、本件の如き著しい非行を敢えてするに至つた点を考えると少年に対しては最早在宅保護の手段は適切でなく、少年を中等少年院に送致する旨の原決定は洵に相当であつて、その処分の不当を主張する論旨も亦理由がない。

よつて本件抗告は理由がないから少年法第三十三条第一項により棄却すべきものと認め、主文のとおり決定する。

(裁判長判事 山本長次 判事 荒川省三 判事 今村三郎)

別紙

申立理由

一、本人Mは裁判官が判断した窃盗なる罪名を意識せず只車の運転をしたいばかりに乗り出したもので「都合ヨクドアーの開いた鍵を置き忘れた車があつた」他人の物品を盗つて売飛ばさうと又は私有にする気持はなかつたと思う。

一、右の様な軽い気持ちでやつた事に対しての罪名又送致期間の長い事は前非を悔いておる現在可酷と思はれ今後の人生に悪影響を及ぼすとも思はれます。

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